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22、二十二 秒针滴答滴 ...

  •   “喂,您好?您好?怎么了,河合先生……”见我在电话那头沉默不语,滨田催促般的问,“喂?您好,您好……”

      “啊……”

      “那边是河合先生吗……”

      “啊……”

      “怎么了……”

      “啊……我不知道该怎么办才好了……”

      “可是,光在电话口说话,又有什么用呢?”

      “我知道没有什么用,但是……滨田君,我真的很为难。不知道怎么办才好。自从那家伙走后,我一直很痛苦,夜里辗转反侧,都不能好好地睡上一觉。”
      在这里,我为了求得滨田的同情,用尽了浑身的哀怨继续说。
      “……滨田君,在这种情况下,我除了你以外没有其他可以拜托的人了,很抱歉给您添了很多麻烦,但是我、我……我想知道娜奥米的住处。我想弄清楚她到底是在熊谷家,还是找了其他的男人。就这件事,诚然是我一厢情愿地自作主张,但是,你能不能尽力调查一下?……我想,与其自己调查,不如由你来,或许还更有头绪,所以……”

      “嗯,这个嘛,我一查也许马上就能查出来。”滨田一副不费事的语气说,“不过河合先生,你有什么线索吗?”

      “我觉得她多半在熊谷那边。其实,是你我才说的,直到现在,娜奥米私下里还和熊谷有关系。前段时间这件事暴露了,最后她和我吵了一架,从家里跑了出去……”

      “嗯……”

      “可是听你说,她和西洋人那些不三不四的男人混在一起,还穿着洋服,就让我完全摸不着头脑了。不过,我想,只要我去见了熊谷,大概就能知道她的情况了。”

      “啊,是啊,是啊。”滨田打断我的牢骚,“那我先去查一下。”

      “请你尽快查清这件事,拜托……如果可以的话,最好今天就把结果告诉我,这样就帮了大忙了……”

      “啊,这样啊,大概今天就能查清了吧,查清楚了的话,我要去哪里通知你呢?你最近还在大井町的公司上班吗?”

      “不,这件事发生后,我一直向公司请假。我想着,万一娜奥米就回来了呢?所以尽量不让家里没人。抱歉,这种话实在有些任性,电话里说也不太合适,要是能见到您就好了……您觉得如何?要是情况允许的话,你能到大森这边来吗?”

      “嗯,没关系,反正我也闲着。”

      “啊,谢谢你,我真的很感激你!”这么一来,滨田的到来就成了一刻千秋的事,我只好心急如焚地问,“那您大概几点来呢?最晚两三点钟能查清楚吗?”

      “这个嘛,我想你应该明白的,不去亲眼见见这家伙一下,否则是说不清楚的。我会采取最好的办法,不过,视情况而定,也许要花两三天的时间也说不准……”

      “那、那也是没办法的事,明天也好,后天也罢,我都在家里等着,直到你来为止。”

      “我知道了,详细情况等见了面再告诉你吧——就这样,拜拜……”

      “啊?喂,喂?”
      电话快要挂断的时候,我再次慌忙地叫住滨田。
      “喂、喂……那个,还有……这也是根据当时的情况而定,怎么样都无所谓……如果你能直接见到娜奥米,有机会和她说话的话,请转告她——我决不会追究她的罪过,我很清楚:关于她的堕落,自己也有罪过;对于自己的错恶,我会再三道歉;无论什么条件,我都愿意听从。往日的一切就当流水过去吧,请务必要再回来一次。如果她不愿意,也至少要和我见一面——”
      在说无论什么条件我都愿意听从的时候,其实我真实的心情是:如果她让我土下座,那我很乐意下跪;她让我把额头贴在地上,我就磕头;我无论如何都要向她道歉。虽然我很想这么说,但实在说不出口。
      “——我是多么的想念她。如果可以的话,请帮我转告一下吧……”

      “啊,是这样吗?有机会的话,我一定会告诉她的。”

      “还有,我想……她是那种性格,所以即便她想回来得想疯了,也还是会固执地拒绝。如果是这样话,就说我非常消沉,无礼地硬要让她本人过来……”

      “我明白了,我明白了,不过我不能保证,但我会尽力去做的。”滨田听我这么说,有些不耐烦地回答道。

      不过,我还是在自动电话亭里絮絮叨叨,直到荷包里的五钱铜币全部花完为止。恐怕这是我有生以来还是第一次哭泣着、颤抖着,如此雄辩、如此厚颜地出言吧。
      可是等电话结束后,我非但没有松一口气,反而更焦心了。滨田虽然说过今天之内会来,但是如果今天之内不来的话,该怎么办才好呢?——不,与其说该怎么办,不如说自己会变成什么样呢?自己现在除了拼命地思慕着娜奥米之外,做不了任何事。我无能为力。不能睡觉,不能吃饭,不能出门,只能闷在家里,束手以待别人为自己奔走,或带来某些报道。
      其实,人这种生物,就没有比无所事事更为痛苦的事情了,但我在痛苦的基础上,更是对娜奥米思念得要死。我对这种思念懊恼不已,却把自己的命运托付给别人,凝视着时钟的指针,想想都觉得不可忍受。
      虽然只有短短一分钟,但“时间”的脚步却缓慢得惊人,让人感到无限漫长。一分钟要转六十圈才满一小时,转一百二十圈才满两小时,如果要等三个小时,这毫无意义、毫无办法的“一分钟”,秒针滴答滴答滴答滴答地绕圈绕圈,这期间必须忍耐一百八十回!如果不是三个小时,而是四个小时、五个小时,或者半天、一天,甚至两天、三天的话,我想,我一定会在等待中思恋发狂。

      虽然我已经做好了心理准备,滨田再早也要到傍晚才会来,可是四个小时后,也就是十二点左右,外面的门铃响了起来,接着是滨田的声音:
      “午安。”

      听到这个意外的声音时,我竟不由自主,眉飞色舞地跳了起来,急忙去开门。语气忐忑不安:
      “啊,午安!我马上就开门,钥匙还挂着呢。”
      我说着,直想:真没想到他这么快就来了,看来是在不经意间见到了娜奥米。一撞面就了解了事情的原由,然后带她一起回来了吧。
      想到这里,我更高兴了,心中怦怦直跳。

      打开门后,我本以为她就在滨田身后,四下张望,却不见人影。只有滨田一个人站在门廊上。
      “啊,先前失礼了。怎么样?弄明白了吗?”我咬紧牙关问他。

      滨田却显得很平静,怜悯地望着我的脸。
      “是的,我弄明白了,但是……河合先生,那位欺人太甚,还是放弃比较好。”
      他斩钉截铁地说,然后摇了摇头。

      “那、那、那是怎么一回事?”

      “怎么说呢,完全不像话——我是为了你才这么说的,你还是把娜奥米女士忘掉吧。”

      “这么说来,你见过娜奥米了吗?见过面和她说过话,但觉得很绝望?”

      “不,我没有见到娜奥米女士。我是去熊谷家,完完全全打听过情况才过了的。而且事情太复杂了,着实吓了我一跳。”

      “可是滨田君,娜奥米到底在哪里?我想先知道这个。”

      “在哪里?哼,并没有固定的地方,只是到处留宿而已。”

      “她没有那么多可以留宿朋友吧?”

      “娜奥米女士有几个你不认识的男性朋友,具体有几人我不清楚。不过,最开始和你吵架的那天,她还跑到熊谷那里去了。要是她事先打个电话还好,可是她载着行李,开着汽车,一下子就到了门口。熊谷家里的人都在问娜奥米到底是什么人,吵得不可开交,熊谷连‘快进来吧’也说不出口了。”

      “哦,然后呢?”

      “那也没办法,娜奥米就把行李藏在熊谷的房间里,两个人到外面去。接着又去了一家很可疑的旅馆,而且,那家旅馆就在大森贵宅附近的某栋楼,也就是那天早上被你撞见的地方,实在是太大胆了,不是吗?”

      “那么,那天娜奥米又去了那个地方?”

      “嗯,他是这么说的。熊谷一副很得意的样子,炫耀他和娜奥米的爱情故事,我听了很不高兴。”

      “这么说,那天晚上两人住在那里了?”

      “不是的,那两人在那里待到傍晚,然后一起去银座散步,在尾张町的十字路口就分手了。”

      “可是,这也太奇怪了。熊谷那家伙是不是在说谎……”

      “不,你听我说,分别的时候,熊谷觉得娜奥米有点可怜,就问她‘今晚住哪儿’,‘有好几个地方可以住,我打算去横滨了。’她回答,没有一点儿消沉,直接往新桥那边去——”

      “横滨。谁家在那儿?”

      “是啊,很奇怪的对吧,娜奥米再怎么有面子,在横滨大概也没地方住吧。所以熊谷想着,她虽然嘴里说着那样的话,多半是回大森去了。可第二天傍晚娜奥米打来一个电话,‘我在El Dorado等着,你不马上来吗?’于是他去了一看,娜奥米赫然穿着令人眼前一亮的晚礼服,拿着孔雀羽毛扇,颈饰、腕环闪闪发光,周围围着西洋人和各种各样的男人,欢闹不休。”

      滨田的话就像一个惊吓箱,里面蹦出的东西让人不禁“咦”地一声。
      也就是说,娜奥米头一晚好像住在洋人那里,那个洋人叫威廉·麦卡内尔,就是我第一次和娜奥米去El Dorado跳舞时,未经介绍就走到她身边,硬要和她一起跳舞的那个厚颜无耻、涂着白.粉、浮华艳冶的男人。
      然而更令人吃惊的是——根据熊谷的观察——娜奥米在那天晚上去留宿之前,和那个叫麦卡内尔的男人并没有什么交情。
      不过,娜奥米以前就私下对那个男人有好感。麦卡内尔长着一张有点喜欢女色的脸,爽朗得像个演员,不仅在舞伴中有“色魔洋人”的传闻,娜奥米自己也说,“那个西洋人的侧脸真好看,有点像约翰·巴里。”——约翰·巴里就是亚米利加的俳优、演过几部活动写真的约翰·巴里摩尔——她这么说,可见之前就确实注意到了那个西洋人。
      或者眉目传情了也说不定。麦卡内尔会觉得“这家伙对我有意思”,进而调笑她吧。无疑,两人并不是朋友,她却因这点关系就独自上门。
      然后娜奥米去拜访时,麦卡内尔大概是觉得一只有趣的鸟飞进家门,便顺水推舟,“今晚住我家?”“嗯,好的。”——

      “不管怎么说,这家伙多少有点让人难以置信啊,初次去陌生男人家,当天晚上就住下来……”

      “可是河合先生,娜奥米女士应该只觉得这是件稀松平常的事吧。不过,麦卡内尔也觉得有些不可思议,昨晚问熊谷:‘这位小姐到底是什么人?’”

      “让来历不明的女人留宿,这房主也真是……”

      “不止是留宿,还穿着洋服、戴着腕环和颈饰,我看她的样子还挺威风的。就这样,两人只过了一个晚上就熟悉了,娜奥米女士还‘威利、威利’地叫那家伙。”

      “那,洋服和颈饰也是那个男人买的吗?”

      “好像是买的。但因为是西洋人嘛,借女性朋友的衣裳以应付一时之需也不为怪。只要娜奥米女士一撒娇:‘我想穿洋服。’男人最终都会讨好她。那件衣服也不是现成的,贴在她身上严丝合缝;鞋子也是French heel的,鞋跟很高,漆皮的鞋尖处有细小的宝石闪闪发光,大概是人造新钻石什么的。昨夜的娜奥米女士啊,就像童话里的辛德瑞拉一样。”

      滨田这么一说,想来那个辛德瑞拉娜奥米该多么的美丽,我就不由得地激动起来。可下一个瞬间,我又为自己的不端大意而感到惊讶,产生了一种浅陋、可悲、懊恼的、说不出的厌烦情绪。
      如果是去熊谷那儿还好,可到一个不知习性的西洋人那里去,拖拉着、纠缠着住下来,还让别人帮自己做衣服……这是到昨天为止还有夫主的女人该做的事情吗?那个、和我同居多年的娜奥米,就是那种肮脏的、像卖春妇一样的女人吗?难道我直到现在还看不清她的正体,还沉浸在愚蠢的梦中吗?
      啊,就如滨田所说,不管我多么爱她,也得放弃那个女人了。完全是自取其辱,男人体面全都被抹黑了……

      “滨田君,容我再强调一遍,刚才说的都是事实吧?不光熊谷能证明,你也会证明吧?”

      滨田看到我眼中涌出泪水,同情似地点点头:“你问得这般艰难,我也能体察你的心情,自然不忍言明。但实际上昨晚我也在场,我想,熊谷说的应该是事实。除此之外,我还知道很多意料之外而又情理之中的事,但请你不要再打听下去了,请相信我,好吗?我绝不会、绝不会半开玩笑地夸大事实——”

      “啊,谢谢,我已经问得差不多了,没有必要再查证下去了……”
      不知道为什么,说到这里,我的话哽在喉咙,大颗大颗的眼泪一下子就掉了下来。
      ‘这不是真的!’我的心在悲鸣。
      我突然一把抱住滨田,把脸伏在他的肩膀上,哇地一声哭了,发出荒谬绝伦的声音。
      “滨田君!我、我……我已经彻底放弃那个女人了!”

      “当然!如您所说,理所当然!”
      滨田似乎认同我的说法,用浑浊的声音喊道。
      “我说的都是真的,我今天来就是想告诉你,娜奥米女士已经没有希望了。但是,那个人说不定什么时候又会若无其事地出现在你身边,事实上,现在都没有人会认真地和娜奥米女士打交道了。用熊谷这个人的话来说,她只是被大家用来消遣的东西,还取了一个难以启齿的绰号。至今为止,你在不知不觉间都不知受了多少侮辱……”

      曾经和我一样深爱着娜奥米的滨田,和我一样被她抛弃的滨田——这个少年充满着悲愤,从心底吐露出为我着想的话语,如同一把锋利的手术刀正剜去腐烂的肉。
      她只是被大家用来消遣的东西,还取了一个难以启齿的绰号——这种可怕的“口诛笔伐”反而让我的心情变得舒畅,有如解体疟疾,肩膀一时轻快起来,连眼泪都止住了。

      ·

      「ああ、もし、もし、どうしたんですか、河合さん、………もし、………」

      私があまり電話口で黙っているので、浜田はそう云って催促しました。

      「ああ、もし、もし、………」

      「ああ、………」

      「河合さんですか、………」

      「ああ、………」

      「どうしたんですか、………」

      「ああ、………どうしたらいいか分らないんです、………」

      「しかし電話口で考えていたって、仕様がないじゃありませんか」

      「仕様がないことは分ってるんだが、………しかし浜田君、僕は実に困ってるんですよ。どうしたものか途方に暮れているんですよ。彼奴がいなくなってから、夜もロクロク寝ないくらいに苦しんでいるんです。………」

      ここで私は浜田の同情を求めるために精一杯の哀れみを籠めてつづけました。

      「………浜田君、僕はこの場合、君より外に頼りにする人がないもんだから、飛んだ御迷惑をかけるんですけれど、僕は、僕は、………どうかしてナミの居所を知りたいんです。熊谷の所にいるんだか、それとも誰か外の男の所にいるんだか、それをハッキリと突き止めたいんです。就いては誠に、勝手なお願いなんですが、君の御尽力でそれを調べて戴く訳には行かないでしょうか。………僕は自分で調べるよりも、君が調べて下さる方がいろいろ手蔓がおありになりはしないかと、そう思うもんですから、………」

      「ええ、そりゃ、僕が調べれば直きに分るかも知れませんがね」

      と、浜田は造作もなさそうに云って、

      「ですが河合さん、あなたの方にも大凡そ何処と云う心当りはないんですか?」

      「僕はテッキリ熊谷の所だと思っていたんです。実は君だからお話しますが、ナミは未だに僕に内証で、熊谷と関係していたんです。それがこの間バレたもんだから、とうとう僕と喧嘩になって、家を飛び出しちまったんです。………」

      「ふむ、………」

      「ところが君の話だと、西洋人だのいろんな男が一緒だと云うし、洋服なんか着ていると云うんで、僕には全く見当が付かなくなっちゃったんです。でも熊谷に会って下されば大概の様子は分るだろうと思うんですが、………」

      「ああ、よござんす、よござんす」

      と、浜田は私の愚痴ッぽい言葉を打ち切るように云うのでした。

      「それじゃとにかく調べて見ますよ」

      「それもどうか、成るべく至急にお願いしたいんですけれど、………若し出来るなら今日のうちにでも結果を知らして下さると、非常に助かるんですけれど、………」

      「ああ、そうですか、多分今日じゅうには分るでしょうが、分ったら何処へお知らせしましょう? あなたはこの頃、やっぱり大井町の会社ですか?」

      「いや、この事件が起ってから、会社はずッと休んでいるんです。万一ナミが帰って来ないもんでもないと、そんな気がするもんですから、成るたけ家を空けないようにしているんです。それで何とも勝手な話ですけれど、電話ではちょっと工合が悪いし、お目に懸れれば大変好都合なんですが、………どうでしょうか?様子が知れたら大森の方へ来て戴くことは出来ないでしょうか?」

      「ええ、構いません、どうせ遊んでいるんですから」

      「ああ、有難う、そうして下さればほんとうに僕は有難いんです!」

      さてそうなると、浜田の来るのが一刻千秋の思いなので、私は尚もセカセカしながら、

      「じゃ、おいでになるのは大概何時頃になるでしょうか? おそくも二時か三時には分るでしょうか?」

      「さあ、分るだろうとは思いますが、しかし此奴は一往尋ねて見てからでなけりゃあハッキリしたことは云えませんねえ。最善の方法を取っては見ますが、場合に依ったら二三日かかるかも知れませんから、………」

      「そ、そりゃ仕方がありません、明日になっても明後日になっても、僕は君が来て下さるまで、じっと内で待っていますよ」

      「承知しました、委しい事はいずれお目に懸ってからお話しましょう。―――じゃ左様なら。―――」

      「あ、もし、もし」

      電話が切れそうになった時、私は慌ててもう一度浜田を呼び出しました。

      「もし、もし、………あのう、それから、………これはその時の事情次第でどうでもいいことなんですが、君が直接ナミにお会いになるようだったら、そして話をする機会があったら、そう云って戴きたいんですがね。―――僕は決して彼女の罪を責めようとはしない、彼女が堕落したに就いては自分の方にも罪のあることがよく分った。それで自分の悪かったことは幾重にも詫まるし、どんな条件でも聴き入れるから、一切の過去は水に流して、是非もう一度帰って来てくれるように。それも厭なら、せめて一遍だけ僕に会ってくれるように。―――」

      どんな条件でも聴き入れると云う文句の次に、もっと正直な気持を云うと、「彼女が土下座しろと云うなら、僕は喜んで土下座します。大地に額を擦りつけろと云うなら、大地に額を擦りつけます。どうにでもして詫まります」と、寧ろそう云いたいくらいでしたが、さすがにそこまでは云いかねました。

      「―――僕がそれほど彼女のことを思っていると云うことを、若し出来るなら伝えて戴きたいんですがね。………」

      「ああ、そうですか、機会があったらそれも十分そう云って見ますよ」

      「それから、あのう、………或はああ云う気象ですから、帰りたいには帰りたくっても、意地を突ッ張っているのじゃないかと思うんです。そんな風なら、僕が非常にショゲているからとそう仰っしゃって、無理にも当人を連れて来て下さると尚いいんですが、………」

      「分りました、分りました、どうもそこまでは請け合いかねますが、出来るだけの事はやってみますよ」

      余り私がしつッこいので、浜田も聊かウンザリしたような口調でしたが、私はそこの自動電話で、蟇口の中の五銭銅貨がなくなるまで、三通話ほども立て続けにしゃべりました。恐らく私が泣き声を出したり、顫え声を出したりして、こんなに雄弁に、こんなにずうずうしくしゃべったことは、生れて始めてだったでしょう。が、電話が済むと、私はほッとするどころでなく、今度は浜田の来てくれるのが、無上に待ち遠になりました。多分今日じゅうにとは云ったけれども、若し今日じゅうに来ないようなら、どうしたらいいだろう?―――いや、どうしたらと云うよりも、自分はどうなってしまうだろう?自分は今、一生懸命ナミを恋い慕っているより外、何の仕事も持っていないのだ。どうすることも出来ずにいるのだ。寝ることも、食うことも、外へ出ることも出来ないで、家の中にじーッと籠って、あかの他人が自分のために奔走してくれ、或る報道を齎してくれるのを、手を束ねて待っていなければならないのだ。実際人は、何もしないでいる程の苦痛はありませんが、私はその上に死ぬほどナミが恋しいのです。その恋しさに身を懊らしながら、自分の運命を他人に委ねて、時計の針を視詰めているということは、考えて見てもたまらないことです。ほんの一分の間にしても、「時」の歩みと云うものが驚くほど遅々として、無限に長く感ぜられます。その一分が六十回でやっと一時間、百二十回でやっと二時間、仮りに三時間待つものとしても、このしょざいない、どうにもこうにもしようのない「一分」を、セコンドの針がチクタク、チクタクと、円を一周する間を、百八十回こらえねばならない! それが三時間どころではなく、四時間になり、五時間になり、或は半日、一日になり、二日にも三日にもなったとしたら、待ち遠しさと恋しさの余り、私はきっと発狂するに違いないような気がしました。

      が、いくら早くても浜田の来るのは夕方になるだろうと、覚悟をきめていたのでしたが、電話をかけてから四時間の後、十二時頃になって、表の呼鈴がけたたましく鳴り、続いて浜田の、「今日は」という意外な声が聞えた時には、私は覚えず、嬉し紛れに飛び上って、急いでドーアを開けに行きました。そしてソワソワした口調で、「ああ、今日は。今すぐ此処を開けますよ、鍵が懸っているもんですから」と、そう云いながらも、「こんなに早く来てくれようとは思わなかったが、事に依ったら訳なくナミに会えたんじゃないかな。会ったら直きに話が分って、一緒に彼女を連れて来てでもくれたんじゃないかな」と、ふとそんな風に考えると、尚更嬉しさが込み上げて来て、胸がドキドキするのでした。

      ドーアを開けると、私は浜田のうしろの方に彼女が寄り添っているかと思って、辺りをキョロキョロ見廻しましたが、誰も居ません。浜田がひとりポーチに立っているだけでした。

      「やあ、先刻は失礼しました。どうでしたかしら?分りましたか?」

      私はいきなり噛み着くような調子で尋ねると、浜田はイヤに落ち着き払って、私の顔を憐れむが如く眺めながら、「ええ、分ることは分りましたが、………しかし河合さん、もうあの人はとても駄目です、あきらめた方がよござんすよ」と、キッパリ云い切って、首を振るのでした。

      「そ、そ、そりゃあどう云う訳なんです?」

      「どう云う訳ッて、全く話の外なんですから、―――僕はあなたの為めを思って云うんですが、もうナミさんのことなんぞは、忘れておしまいになったらどうです」

      「そうすると君は、ナミに会ってくれたんですか?会って話はしてみたけれども、とても絶望だと云うんですか?」

      「いや、ナミさんには会やしません。僕は熊谷の所へ行って、すっかり様子を聞いて来たんです。そしてあんまりヒド過ぎるんで、実に驚いちまったんです」

      「だけど浜田君、ナミは何処に居るんです?僕は第一にそれを聞かして貰いたいんだ」

      「それが何処と云って、極まった所がある訳じゃなく、彼方此方を泊り歩いているんですよ」

      「そんなに方々泊れる家はないでしょうがね」

      「ナミさんにはあなたの知らない男の友達が、幾人あるか知れやしません。尤も最初、あなたと喧嘩をした日には、熊谷の所へやって来たそうです。それも予め電話をかけて、コッソリ訪ねて来てくれるんならよかったんだが、荷物を積んで、自動車を飛ばして、いきなり玄関に乗り着けたんで、家じゅうの者が一体あれは何者だと云う騒ぎになったもんだから、『まあお上り』とも云う訳に行かず、さすがの熊谷も弱っちゃったと云っていました」

      「ふうん、それから?」

      「それで仕方がないもんだから、荷物だけを熊谷の部屋に隠して、二人でともかくも戸外へ出て、それから何でも怪しげな旅館へ行ったと云うんですが、しかもその旅館が、この大森のお宅の近所の何とか楼とか云う家で、その日の朝もそこで出会ってあなたに見付かった場所だと云うから、実に大胆じゃありませんか」

      「それじゃ、あの日に又彼処へ行ったんですか」

      「ええ、そうだって云うんですよ。それを熊谷が得意そうに、のろけ交りにしゃべり散らすんで、僕は聞いていて不愉快でした」

      「するとその晩は、二人で彼処へ泊ったんですね?」

      「ところがそうじゃないんです。夕方までは其処にいたけれど、それから一緒に銀座を散歩して、尾張町の四つ角で別れたんだそうです」

      「けれども、それはおかしいな。熊谷の奴、嘘をついているんじゃないかな、―――」

      「いや、まあお聞きなさい、別れる時に熊谷が少し気の毒になったんで、『今夜は何処へ泊るんだい』ッてそう云うと、『泊る所なんか幾らもあるわよ。あたしこれから横浜へ行くわ』ッて、ちっともショゲてなんかいないで、そのままスタスタ新橋の方へ行くんだそうです。―――」

      「横浜と云うのは、誰の所なんです?」

      「そいつが奇妙なんですよ、いくらナミさんが顔が広いッて、横浜なんかに泊る所はないだろうから、ああ云いながら多分大森へ帰ったんだろうと、そう熊谷が思っていると、明くる日の夕方電話が懸って、『エルドラドオで待っているから直ぐ来ないか』と云う訳なんです。それで行って見ると、ナミさんが目の覚めるような夜会服を着て、孔雀の羽根の扇を持って、頸飾りだの腕環だのをギラギラさせて、西洋人だのいろんな男に囲まれながら、盛んにはしゃいでいるんだそうです」

      浜田の話を聞いているとあたかもビックリ箱のようで、「おやッ」と思うような事実がピョンピョン跳び出して来るのです。つまりナミは、最初の晩は西洋人の所へ泊ったらしいのですが、その西洋人はウィリアム·マッカネルとか云う名前で、いつぞや私が始めてナミとエルドラドオへダンスに行った時、紹介もなしに傍へ寄って来て、無理に彼女と一緒に踊った、あのずうずうしい、お白.粉を塗った、にやけた男がそれだったのです。ところが更に驚くことには、―――これは熊谷の観察ですが、―――ナミはあの晩泊りに行くまで、そのマッカネルと云う男とは何もそれほど懇意な仲ではなかったのだと云うのです。尤もナミも、前から内々あの男に思し召しがあったらしい。何しろちょっと女好きのする顔だちで、すっきりとした、役者のような所があって、ダンス仲間で「色魔の西洋人」と云う噂があったばかりでなく、ナミ自身も、「あの西洋人は横顔がいいわね、何処かジョン·バリに似てるじゃないの」―――ジョン·バリと云うのは亜米利加の俳優で、活動写真でお馴染のジョン·バリモーアのことなのです。―――と、そう云っていたくらいだから、確かにあれに眼を着けていたのだ。或はちょいちょい色眼ぐらいは使ったことがあるかも知れない。それでマッカネルの方でも、「此奴は己に気がある」と見て、からかったことがあるんだろう。だから友達と云うのでもなく、ほんのそれだけの縁故でもって押しかけて行ったに違いないんだ。そして訪ねて行って見ると、マッカネルの方じゃ面白い鳥が飛び込んだと思って「あなた今晩私の家へ泊りませんか」「ええ、泊っても構わないわ」と云うようなことになったんだろう。―――

      「何ぼ何でも、そいつは少し信じかねるな、始めての男の所へ行って、その晩すぐに泊るなんて。―――」

      「だけど河合さん、ナミさんはそう云うことは平気でやると思いますね、マッカネルもいくらか不思議に感じたと見えて、『このお嬢さんは一体何処の人ですか』ッて、昨夜熊谷に聞いたそうです」

      「何処の人だか分らない女を、泊める方も泊める方だな」

      「泊めるどころか洋服を着せてやったり、腕環や頸飾りを着けてやったりしているんだから、なお振ってるじゃありませんか。そうしてあなた、たった一と晩ですっかり馴れ馴れしくなっちまって、ナミさんは其奴のことを『ウイリー、ウイリー』ッて呼ぶんだそうです」

      「じゃ、洋服や頸飾りも、その男に買わせたんでしょうか?」

      「買わせたのもあるらしいし、西洋人のことだから、友達の女の衣裳か何かを借りて来て、そいつを一時間に合わせたのもあるらしいッて云うことですよ。ナミさんが『あたし洋服が着てみたいわ』ッて、甘ッたれたのが始まりで、とうとう男が御機嫌を取ることになっちまったんじゃないでしょうか。その洋服も出来合いのようなものじゃなくって、体にぴったり篏まっていて、靴なんかもフレンチ·ヒールのきゅッと踵の高い奴で、総エナメルの爪先のところに、多分新ダイヤか何かでしょうが、細かい宝石が光ってるんです。まるで昨夜のナミさんは、お伽噺のシンデレラと云う風でしたよ」

      私は浜田にそう云われて、そのシンデレラのナミの姿がどんなに美しかったかと思うと、はっと我知らず胸が躍って来るのでしたが、又その次の瞬間には、あまりな不行跡に呆れてしまって、浅ましいような、情ないような、口惜しいような、何とも云えないイヤな気持になるのでした。熊谷ならばまだしものこと、性の知れない西洋人の所へなんぞ出かけて行って、ずるずるべったりに泊り込んで、着物を拵えて貰うなんて、それが昨日まで仮りにも亭主を持っていた女のすべき業だろうか? あの、己が長年同棲していたナミと云うのは、そんな汚れた、売春婦のような女だったのか?己には彼女の正体が今の今まで分らないで、愚かな夢を見ていたのか? ああ、成るほど浜田の云うように、己はどんなに恋しくっても、もうあの女はあきらめなければならないのだ。己は見事に耻を掻かされた、男の面へ泥を塗られた。………

      「浜田君、くどいようでももう一度念を押しますが、今の話は残らず事実なんですね?熊谷が証明するばかりでなく、君も証明するんですね?」

      浜田は私の眼の中に涙が湧いて来たのを見て、気の毒そうに頷きながら、「そう云われると僕はあなたのお心持をお察しして、云い辛くなって来るんですが、現に昨夜は僕もその場に居合わせたんだし、大体熊谷の云うことは本当だろうと思われるんです。まだこの外にもお話すればいろいろな事が出て来るので、成る程とお思いになるでしょうが、何卒そこまではお聞きにならずに、僕を信じて下さいませんか。僕が決して、面白半分に事実を誇張しているのではないと云うことを、―――」

      「ああ、有難う、そこまで伺えばもういいんです、もうそれ以上聞く必要は………」

      どうした加減か、こう云った拍子に私の言葉は喉に詰まって、急にパラパラ大粒の涙が落ちて来たので、「こりゃいけない」と思った私は、突然浜田にひしと抱き着き、その肩の上へ顔を突ッ伏してしまいました。そしてわあッと泣きながら、途轍ない声で叫びました。

      「浜田君! 僕は、僕は、………もうあの女をキレイサッパリあきらめたんです!」

      「御尤もです! そう仰っしゃるのは御尤もです!」

      と、浜田も私に釣り込まれたのか、矢張濁声で云うのでした。

      「僕は、ほんとうの事を云うと、ナミさんには最早や望みがないと云うことを、今日はあなたに宣告する気で来たんですよ。そりゃあの人のことですから、又いつ何時、あなたの所へ平気な顔で現れるかも知れませんが、今では事実、誰も真面目でナミさんを相手にする者はありゃしないんです。熊谷なんぞに云わせると、まるでみんなが慰み物にしているんで、とても口に出来ないようなヒドイ仇名さえ附いているんです。あなたは今まで、知らない間にどれほど耻を掻かされているか分りゃしません。………」

      嘗ては私と同じように熱烈にナミを恋した浜田、そして私と同じように彼女に背かれてしまった浜田、―――この少年の、悲憤に充ちた、心の底から私の為めを思ってくれる言葉の節々は、鋭いメスで腐った肉を抉り取るような効果がありました。みんなが慰みものにしている、口には出来ないヒドイ仇名が付いている、―――この恐ろしいスッパ抜きは却って気分をサバサバとさせ、私は瘧が取れたように一時に肩が軽くなって、涙さえ止まってしまいました。

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