《はてなき旅》君兰

15、第９章 話

　　「だぁから言ってるでしょ？きっとなんか違う星と見間違えたのよ。」
　　ルルアはテーブルに手を叩きつけた。
　　「ホントにそうかなぁ・・・。だって俺と同じような星の特徴言ってたんだよ・・・。」
　　クランはルルアの押しに負けそうになっていた。ここは森を抜けたところにある町、カルスンタウンの宿屋。さっきからルックの話から少しも離れていない。
　　「そいつ・・・なんか怪しいな・・。」
　　とティラがコップに入ったコーヒーを静かにすすった。
　　「やっぱルックがおかしいのよ。あのほこらの女の人も言ってたじゃない。」
　　「そうかなぁ・・・。」
　　クランはまだあきらめ切れなかった。ルックがウソをついている？何のために？まさか自分にまでウソをつくなんて。クランは気が気ではなかった。
　　「まずは旅をしながら探して本人に直接聞いてみる方がいいのではないでしょうか。」
　　アウラもティラと同じコーヒーに口をつけた。
　　「それがいいわ。きっと生きてるはずよ。バカはそう簡単には死なないわ。それで行きましょう。じゃ、これからの話だけどこの町には明日でさよならして、出発するんだけど町をでてちょっとしてからまた町があるの。その町には簡単には入れないらしいの。だからどうやって入るか今考えないと。」
　　ルルアは地図をテーブルに広げ、指で道筋をたどって皆に見せた。
　　「入れない条件が分からないとどうすることも出来ないだろう？」
　　ティラはコップを手から離した。
　　「そうなのよねー・・・。ってそう言えばティラのことも良く聞いてないわよね。」
　　と３人の視線がティラに集中した。
　　「ティラは何であんなところで待ってたの？」
　　「さぁな・・・。なぜかあそこに居たらお前達と会える気がしたんだ。そしたらあの女がほこらを固めてくれと言ったんだ。だから氷であんなふうにした・・・。それだけだ。」
　　ティラはテーブルにひじをついて指を顔の前で組んだ。
　　「氷ってラルク？」
　　クランが質問すると、ティラは頷いた。
　　「そんだけ？なんかこれからいろいろありそうね。早く天空への入り口を見つけなきゃ・・。」
　　「俺はそんなことはどうでもいい・・・。目的はただ一つだ・・・。」
　　ティラが冷たく言った。
　　「何なの・・・その目的って・・・。？」
　　クランがごくりとツバを飲み込んだ。
　　「俺は妹を探している。親は昔、魔物に殺された。その時一緒に残された妹がいたんだ・・・。だが、４年前に突然姿を消した。今まで探して旅を続けてきた。生きているかも分からない妹を探してな・・・。」
　　ティラの目が少しだけ鋭くなり、寂しげになった。
　　「そんなことがあったの・・・。じゃその顔の十字架は・・・？」
　　「これは呪さ。」
　　ティラが顔の十字架を触った。
　　「おい、君達旅の人かい？」
　　と後ろから少したれ目の２０代後半ぐらいの男が声をかけてきた。
　　「はい、そうですが・・・。」
　　クランは自分の真正面に入り込んできた男に答えた。
　　「そうかい。もしかして隣町にも行くのかい？」
　　おじさんは４人の顔をそれぞれ見た。
　　「おじさん入り方知ってんの！？」
　　ルルアはチャンスとばかりに言った。
　　「ああまぁな・・・。しょうがない、ここであったのも運命だ、教えてやるよ。」
　　「おじさん太っ腹。」
　　ルルアは小さくガッツポーズをした。
　　「おじさんって・・・あのなぁ・・・。もう、よく聞けよ・・・これは他の連中には言うなよ。町の前で召喚獣を呼ぶんだ・・・。だれか使えるやついるか・・・？」
　　と小さくたずねた。
　　「誰も使えないわ・・・。他にも入れる方法はないの？」
　　ルルアもこそこそしゃべった。
　　「まぁあわてるな・・・。これは本当にシークレットだぞ。一回町を通り過ぎるんだ。しばらく行くと家が一軒たってる。ポツンとな。そこのヤツは召喚獣を使えるって話だ。分かったか？」
　　おじさんはニヤッと笑った。
　　「ありがと！おじさん！」
　　ルルアが抱きつかんばかりに喜んだ。
　　「いいって事よ。その代わり、絶対他のヤツには言うんじゃねぇぞ。俺はもう行かなきゃならねぇ。じゃあな。」
　　と言って男はクランがお礼を言いかけたところで行ってしまった。
　　「いいこと聞いちゃった♪」
　　ルルアはニコニコして笑った。
　　「あの男なんかあるな・・・。」
　　ティラが鋭く言うと、
　　「はい・・、なんか隠してますね・・・。」
　　とアウラもティラの言葉に賛成した。
　　「何かって？あんなに気前良く教えてくれたじゃん。」
　　クランとルルアは何も疑いがないように言った。
　　「そこだ。なぜあんなに気前良く話してくれたのか・・・だ。あんなに人に知られたくない情報を今出会ったばっかりの俺達に話したんだ？」
　　ティラの言葉にクランとルルアは黙り込んでしまった。
　　「しかもあちらの方から近づいてきました。何かきっと隠してます。」
　　アウラもティラに上乗せして言った。
　　「とは言ってもその話以外は何も情報はないわけだ。罠にはめるわけだとしても行くしか方法はない・・・。」
　　ティラはふぅと小さくため息をついた。
　　「じゃ行くのね？」
　　「それしかないんじゃない？」

　　翌日、４人は朝早くから召喚獣を使えるという人のところへ向けて町を出た・・・・。

　　「言われたとおりやったぜ？」
　　さっきの男が言った。
　　「ああ、良くやった。」
　　と違う男の声が言った。
　　「さぁ、早く報酬をくれよ。約束だろ？」
　　男は手を差し出した。
　　「そうだな・・・。約束は守ろう・・・。何がほしい・・・？」
　　「金だ！金がほしい！！」
　　と男は目を輝かせた。
　　「そうか・・・クックック・・・。ならあの世で金に埋もれて暮らすがいい・・・。」
　　と男が反応する前に男の首が飛んだ。
　　「さぁ・・・やってこい・・・。俺の所に・・・・。はーはっはっは！」
　　と何者かの笑い声が響いた。