《はてなき旅》君兰

10、第４章 アウラの力

　　「うーーん。いい朝だぁ・・・。」
　　クランは大きく伸びをして顔を洗いに洗面所に向かった。顔にバシャバシャと水をかけて、きれいなタオルで拭く。そして頭にも水をかけて寝癖を無理やりなおした。
　　「おはよ・・・。」
　　と眠そうな顔をしたままルックが入ってきた。
　　「おはよ。」
　　とクランは返事を返し、ルックが鏡に映れるように横によった。ルックはゆっくりスローモーションで顔に水をかけている。
　　「ルック。先に下りてるよ。」
　　とルックに新しいタオルを渡して服を着替えて朝の食事を取りにいった。

　　「ルックおはよ！」
　　と食事の間に入ってきたルックにルルアが元気に挨拶をした。
　　「おはよ・・・・。」
　　ルックは、クランの隣の空いている席にゆっくり腰掛けた。
　　「あら。どうしたの？元気ないわね。」
　　ルルアはフォークにスパゲティの麺をくるくるまきつけて口にくわえた。
　　「あぇ・・・。すんげぇ眠い・・・。」
　　ルックは目の前に運ばれてきたスパゲティとサラダを眺めた。
　　「昨日はルックにしては珍しく遅寝だったからね。」
　　とクランは上手く巻き取れない麺に苦戦していた。
　　「そ？それなら大丈夫ね。旅立つ前に病気でもして足止めでもくらってたらやる気がそがれちゃうわ。」
　　と最後の一巻きでソースをかき集め、まんべんなくつけて口に頬張った。
　　「アウラ、ちょっといい？」
　　とクランがサラダをフォークでバリバリといい音で食べているアウラに声をかけた。
　　「はぁ・・。よろしいですけど・・・・。」
　　アウラはいったん手を止めた。
　　「あのさ。アウラのラルクの事なんだけど、怪我を治したりするのはわかるんだけど、何で魔物に取り付かれたルルアやルックを助けられたんだい？」
　　クランはソースをひざ掛けで拭いた。
　　「あぁ、それはラルクの力だけではありませんが、私の能力は人の体にある免疫や細胞の働きを早めたり、脳に直接命令できるからです。」
　　アウラは食器をかたずけにきた人に食べ残したサラダを渡した。
　　「脳に直接命令できるのかい？すごい能力だね。これじゃどんな強い魔物が現れても大丈夫だね。」
　　とクランが言うと、
　　「いぇ、とても恐ろしい能力です。できれば使いたくありません。私が命令すればその人の細胞を爆発させて殺すこともできます。」
　　とアウラが冷たい声で言った。
　　「そんなことまで・・・。でも回復したり出来るのは便利じゃん。」
　　「とは言っても、その人の免疫ですから死にかけている人には使えません。」
　　「そうそう。だからあんまアウラを頼って危ないことばっかしてると、あの世いきよ。」
　　と横からサラダを食べ終えたルルアが口を挟んだ。
　　「それにアウラが回復させることが出来るのは種族が関係してくんのよ。」
　　ルルアはアウラに変わって説明し始めた。
　　「種族ぅ？」
　　さすがのルックも眠気はなくなって興味が出てきたのか会話に入ってきた。
　　「私の血筋はみなこういう能力を持っているのです。しかし免疫の働きを早めてたりすることは出来ません。ですが私の授かったラルクは回復系だったので上手くかみ合わせてこんなことが出来るようになったのです。」
　　「へぇ～結構すごいことになってるんだなぁ。」
　　とルックが感心していると、食事の間のドアが開き、
　　「ルルア様、そろそろお出かけになってはいかがでしょう。」
　　とヌラが入ってきた。
　　「あっ。そうね。じゃ皆いきましょ。」
　　と４人は席を立ち、自分達の旅の連れとなる武器を探しに城をひとまず後にした。