晋江文学城
下一章 上一章  目录  设置

23、第21話:舞の日記《後編》 ...

  •   留美が身体が不自由なために動けないのを手助けするために、俺は朝早くから彼女の部屋にいた。

      まずは着替えから手伝ってやるとするか。

      勝手に女の子の部屋に入るのもどうかと思うが、これは彼女の両親(+お姉さん)から許可は下りている。

      気心しれた幼馴染といえど、ここまで許しちゃっていいんですか。

      俺がそう言うと彼女のお父さんは『未来君にはいろいろと期待してるからな』と答えが。

      あの、完全に違う意味で誤解されてますね。

      それはとりあえずおいといて、俺は留美の着替えを探してるところだ。

      「……これは……まぁ、これにしておくか」

      上着、スカート、下着と選んだ俺は彼女が寝ているという部屋へと入る。

      そこに寝ている留美は見ていると呻き声のように小さく唸っている。

      まだ傷が痛むのだろうか?

      ようやく、目が覚めた彼女が俺と視線を合わせて慌てふためいている。

      「うぅ……み、未来!?」

      「おはよう。勝手にあがらせてもらってるぞ」

      どうやら、完全に俺の役目を忘れているらしい。

      「あのなぁ。動けないお前の世話を頼まれてるんだ、忘れたのか?」

      「そうだったけど。そ、そんな服の世話まで頼んでないもん。って、それ私の下着!!」

      「別に気にすることじゃないだろ。今さら、お前の下着で驚かないよ」

      いや、ホントは素で恥ずかしいのだが、俺も我慢している。

      「もういいからぁ。お願いだから、ちょっと外に出ていて」

      「着替えの手伝いは?」

      「いりません」

      丁寧に断られたので、俺は仕方なく外に出て行こうとした。

      その時、1冊の日記帳に目が行く。

      「これ、留美の日記か?こういうのつけてんだ?」

      意外に乙女チックなところがあるな、と思いそのノートを手に取る。

      もちろん、人の日記を見るほどデリカシーのないヤツではないが。

      「それは私の日記じゃない。舞の日記よ」

      だが、留美の言葉は俺の予想していた全てを否定する。

      舞の日記……その一言が俺を黒く染めていく。

      「どうしてお前がこれをもっているんだ?」

      俺は言葉にならない声で言う。

      「空さんから預かっていたの。未来に渡してあげてって」

      俺はとりあえず留美の着替えを待ってから、ちゃんとした話をすることにした。

      だが、俺の心臓はバクバクと音をたてるように動悸が激しい。

      舞の書いていた日記、舞の残した言葉に興味がある。

      舞の全てが……そこに記されているんだ。

      「もういいよ」

      ドアの外から彼女の言葉を聞いて俺は部屋に入る。

      私服姿になっていた彼女はベッドに座りながら包帯を取り替えている。

      俺も本来の目的であるためにその手伝いをする。

      洗顔や食事、一通りの事を済ませたあとに俺達は再び部屋で舞の日記を見ていた。

      「これが舞の日記か。日記つけていたのを知っていたのか?」

      「ううん。こういうのって個人的なものだから誰かに見せるものじゃないでしょ」

      誰も自分の日記を見せたがりはしない。

      いや、最近はブログとか流行っているからそうとも言えないか?

      それはともかくとして、舞がどんなことを書いているのか俺は知りたい。

      「留美は中身を見たんだな」

      「ええ」

      短くそういうだけで、特に何も言わない彼女。

      留美にとっては舞の日記は意味がないのか?

      俺は椅子に座り、その日記を読み始めた。

      「……偽りの恋?」

      最初にそう書かれているのに驚きながら、俺は次の文章を読み始めた。

      俺は初めて舞が俺を好きになった理由を知る。

      舞ははじめから俺のことが好きだったわけではなかったらしい。

      俺の場合は幼い頃からの一目惚れだったけどな。

      その日記には俺と舞との5年間の出来事が書き綴られていた。

      あの日、あの時、俺達が何をして、何を感じていたか。

      舞の気持ちが溢れるこの日記の中身を読み進めるたびに、俺の頭に彼女の声が響く。

      笑う顔、泣いてる顔、怒ってる顔、喜んでいる顔……いろんな表情の舞がこの日記を見ていれば思い返される。

      そして、舞が俺の事をどれだけ想ってくれていたかを証明する内容だった。

      だが、見ていて喜びを感じられたのは前半の部分だけ。

      後半、つまり今になるにつれて彼女の日記は俺と舞との関係だけではなく、留美への罪悪感について書かれていた。

      俺への想い、舞への罪、板ばさみになりながらも彼女は俺を愛してくれていた。

      舞はあまりそういう事を口にしなかった。

      その真実の全てがこの日記には書かれている。

      俺と本当の恋人になった時の記述。

      『私はミクちゃんの恋人になる事を選んだ。この選択は間違えてる。そう頭の中で警告するけれど、もう止められない。私はるーちゃんに恨まれるけど、それでもミクちゃんを手に入れるという欲望を止められない。理屈じゃないこの気持ち、抑えられない』

      悩み苦しんだ末の決断、それが俺と恋人になる事を選んだ舞の覚悟だった。

      そして、日記の最後のページはこう書かれていた。

      『明日、私達は前に進むために行動する。その決断がるーちゃんにとっては残酷でしかないとしても。私は友達として最低。ごめんなさい、と謝る事は結局何の救いにもならないよね。だから……私は罪を背負う。2人で前を向いていけるように』

      俺も望んでいた、2人でこれからも歩んでいけることを。

      ……彼女の書き残した最後の言葉は、単純で、そして……最も好きな言葉。

      『私は世界で1番ミクちゃんを愛してる』

      そう、その言葉は俺にとっても彼女と別れる間際に交わしたあの言葉。

      『ミクちゃん、私はずっと貴方を愛します』

      彼女は俺を愛してくれていた。

      それは今でも俺の中にある、心の中にいる。

      日記を読み終えた俺は自然と涙が流れていた。

      舞が死んだ時も、舞の葬式も、舞の墓の前でも涙を流さなかったのに。

      今の俺は舞への気持ちで溢れていた。

      ただ俺は舞の事を好きで、傍にいられる幸せしか望んでいなかったのに。

      こんな事で俺達は永遠に触れられなくなってしまったなんて。

      現実はなんて……残酷な世界なのだろう。

      「未来……」

      留美が俺の傍でその手を握ろうとする。

      俺は彼女のその手を乱暴に振り払う。

      「あっ……」

      お前じゃない、俺が望んでいるのはお前なんかじゃない。

      違う……違う……俺が望んでいたのは、俺が生きていて欲しかったのは……。

      「なんでお前なんだよ」

      そう、俺の口から“本音”の言葉がもれた。

      留美がその言葉に表情をゆがめる。

      「どうして舞が死ななくちゃいけなかった!」

      行き場のない苛立ち、悲しみが俺の中にある。

      どうして、どうして、どうしてッ!!

      俺は留美に八つ当たりをするように言葉で傷つける。

      それが何の意味もないとしても、怒りが俺を突き動かす。

      舞に生きていて欲しかった。

      舞と共に生きていきたかった。

      それなのに、なぜこんな結末にならなくちゃいけない?

      「お前はあの日、舞と何をしていた?どうして、あんな場所にいた?」

      俺の言葉に留美は首を横に振り、本当に小さな声で。

      「覚えてないの……」

      「……なんでだよ。どうして……こんな事にならなくちゃいけなかったんだ!!!」

      俺の心が折れた。

      舞の日記を読んだ事によって、支えとしてきた物が折れてしまった。

      俺は必死に舞の死を受け入れようとしていた。

      だが、これを読んだ後にはそれができなかった。

      死を受け入れる?

      舞は死んだ、それは確かに現実だが、受け止めることなど最初から出来なかった。

      そんなの最初から無理で、自分を抑えこむのが精一杯だった。

      「……全てはお前のせいだ。なぁ、留美?」

      留美さえいなければ、こんな事にはならなかった。

      俺と舞は幸せになれて、恋人としていられたはずなのに。

      留美の想いさえなければ!!

      俺は怒りの矛先を留美に向ける。

      彼女はしばらく目を瞑っていたが、見開くと同時に1つの言葉を紡ぐ。

      「そうね。全て、私が悪い……。そう思ってもいいよ」

      それがきっかけだったのか、俺にはわからない。

      俺の意思はここで途切れるようにしてまるで“別人”のような感覚に陥った。

      「……お前が……!!」

      俺は留美をベッドに力ずくで押し倒していた。

      「いたっ!み、未来!?」

      怯えた留美の表情にもためらいはない。

      そうだ、全ては彼女のせいなのだから。

      それから先の行動は自分でもあまり思い出したくない。

      だが、はっきりと覚えているのは留美の悲痛な叫び声。

      乱暴に彼女の服を脱がし、その白い肌に手をつけた。

      「痛い……。お願いだから、もうやめてよ!未来!」

      俺はその叫ぶ声に何も言わずにただ行為を続ける。

      まだ事故の傷が癒えていない彼女の肌は傷だらけで、白い肌だけによけいに目立つ。

      彼女は力では勝てないと諦めたのか、

      「……未来っ……キスして……」

      俺はその言葉を無視して、身体中に印をつけていく。

      首筋から胸元へと移る時に彼女はそれを両手で隠した。

      「お願い……だから……これは見ないで……」

      涙声の留美が必死に隠そうとしている自分の胸。

      俺はその手を無理やりどかし、右の胸に一筋の深い切り傷の痕。

      そう、事故の傷痕がまだ生々しく残っていた。

      白い肌に似合わないその傷があの事故がどれほどのものだったかを教える。

      「……貴方の事を受け入れること自体は別にいいよ。でも、未来にこういう形で私に触れて欲しくなんてなかった」

      舞を失った寂しさと孤独を留美にぶつける事でしか、自分が自分でいられない。

      留美を傷つけることでしか孤独を癒せない。

      彼女も俺にとっては“大切なもの”だったはずなのに。

      「俺は……俺は……」

      彼女の胸の痛々しい傷を見て、俺は興奮から冷めた。

      留美も被害者でしかなかった、この胸の傷が全てを示していた。

      俺だけが舞を失った事に悲しんでいると思い込んでいた。

      違う、留美も……傷ついてないわけがないじゃないか。

      「……うぅ……ぁあ……」

      俺は嗚咽を漏らしながら涙を流して、留美の身体を抱きしめた。

      本当に取り返しのつかない事を俺はしようとしていた。

      他人を傷つける事しかできない弱い人間だ、どうしようもなく弱い。

      「ごめんな、留美……舞が死んで悲しいのは俺だけじゃないのに」

      泣き続ける俺に留美は優しく言葉を呟く。

      「泣いていいよ、未来」

      俺は壊れ物を扱うように、彼女の手に触れると握り返された。

      俺はその事に驚きながら、ゆっくりと留美の顔を見る。

      彼女も潤んだ瞳で俺を見つめていた。

      「……未来。辛い気持ちをはきだして、溜め込んじゃダメだから」

      「ごめん。謝ってすむことじゃないけれど、ごめんな」

      俺が頭を下げると彼女はいつもの笑みを見せて、

      「気にしないでいいよ。未来が孤独を癒したいなら私を抱いてもいい。私は舞の代わりなんかにはなれないけれど、私の“身体”を求めてくれるならそれでもいい。あ、でも優しくしてね。あと、たまにでいいから……私の事を想って抱いて欲しいな」

      なぜ彼女は笑えるんだろう?

      怖かっただろうし、痛かったはずなのに。

      苦痛しか与えられなかった俺に優しく言葉をかけるその留美もまた、俺のことを愛してくれているんだという事を俺は再確認する。

      俺は舞を忘れられないから、留美の想いは受け入れられない。

      それを彼女は理解したうえでそんな事を言っている。

      俺はその夜、留美の優しさに甘えてしまう形で関係を持ってしまうことになる。

      【 To be continue… 】

      ☆次回予告☆
      痛みも苦しみも何もかも背負う留美。
      ただ1人、その痛みに耐え続ける。
      愛する人のために、未来にそれでも優しく接する。
      心の折れた未来はその優しさに飲み込まれていく。
      悪循環の繰り返す中に希望の光はあるのか?
      【第22話:償われぬ罪】
      それは愛か、幻か。
      彼の事が好きだから、私はその痛みを快楽に変える。

  • 昵称:
  • 评分: 2分|鲜花一捧 1分|一朵小花 0分|交流灌水 0分|别字捉虫 -1分|一块小砖 -2分|砖头一堆
  • 内容:
  •             注:1.评论时输入br/即可换行分段。
  •                 2.发布负分评论消耗的月石并不会给作者。
  •             查看评论规则>>