晋江文学城
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8、第6話:夏の前に ...

  •   ようやく梅雨明けした7月の後半。

      俺は昼飯を食べ終えて、教室でのんびりと残りの昼休憩を過ごしていた。

      もうすぐ夏休み前の期末テストだ。

      普段からそれなりに勉強してる俺とすれば大して焦ることではない。

      「頼むよ、未来。お前だけが頼りなんだ」

      「お願い~。いつもみたいに助けて。ね?」

      それよりも俺にすがりついてるこの猫とクマをどうにかしてくれ。

      毎回テスト前になると隆樹と悠里は俺や舞を頼ってくる。

      俺は隣の席に座ってこの光景を眺めている舞と顔を見合わせてため息をつく。

      彼女達の成績はまぁ考えてみるまでもないひどいもので、毎回俺達が助けている。

      だが、高校3年にもなってこのざまでは俺達も心を鬼にする必要があるだろう。

      「……ダメだ。いつもそうして人頼りだから身につかないんだよ。たまには自分でなんとかしろ。いや、その努力をしてくれ」

      「えー。ミライがいなくちゃ私達がどうなるかわかってるじゃない」

      「そこを何とかしてくれるのが親友だろ?」

      その“なんとかなるだろう”という安易な考えと精神がどうにかならんのか。

      「……頼む。今度、夏コミいった時に同人誌をプレゼントするから」

      「お前と一緒にするな。そんなのもらっても俺は喜ばない。あのな、2人とも諦めて自分で勉強しろよ。それで補習ならしょうがないと夏休みを諦めろ」

      「ひどいよ、ミライ。どうして、そんな事いうの?」

      「それがお前らのためだ。いつまでも俺らに甘えるな」

      悠里よ、口を膨らませる前に自分から勉強するという意思はないのか。

      「ねぇ、舞からも何とか言ってよ。お願いします」

      「う~ん。こればかりは私もミクちゃんの意見に賛成かな」

      「私を見捨てるのね、マイ。いいよ、そういう事ならあの事ミライに言うもん」

      「……ねぇ、ミクちゃん。2人を助けてあげない?ね?私はそういう優しい心を持ったミクちゃんが好きだから」

      舞の態度の急変、一体悠里に何の弱みを握られているのか気になるのだが。

      だが、そんな風に大好きな舞に言われて断れるヤツがどこにいる。

      「舞に言われたらしょうがない。わかったけど、そんなに日もないぞ。どうする?」

      「そういうことなら、私に提案があるわ」

      そう言い出したのはいつのまにか後ろにいた留美だった。

      それから2日後、明日からテストが始まる、まさにここが正念場のテスト前日。

      俺達5人と追加で呼び出された梓と雄輔のいつもの7人は留美の家に集まっていた。

      留美からの提案、それは皆で一夜漬け勉強会をしようという事だった。

      彼女の家の人はこの時期になると旅館が忙しいので夜は帰ってこない。

      そのため俺達はこうして泊りがけで勉強会をしようという事になったわけだ。

      俺や舞はともかく梓と雄輔はただ巻き込まれただけのような感じだ。

      2人とも俺と同じくらいの成績だし、あえてここで徹夜する意味はない。

      「いいのか、お前らが徹夜する必要ないだろ?」

      「まぁ、今さらっていう感じはするけどさ。ここで仲間はずれされるのも哀しいから」

      「それに皆で集まって勉強するのは悪くないもの」

      梓はそう言って机にプリントを広げる。

      綺麗な字で書かれた文字を隆樹と悠里が写している。

      このダメコンビは雄輔、梓と舞に任せることにした。

      3人がかりで教えておけばさすがに問題なかろう。

      本来、先生役だった俺が教えなければならない生徒は意外にも留美だった。

      このプランの提案者は予想外の苦手科目に苦しめられている。

      「しかし、お前がここまで数学が苦手だったとはな」

      俺が見ているのは先日行われた小テスト。

      その紙に書かれているのは赤い文字で10点、ちなみに100点中だ。

      参考まで言えば俺は95点だった。

      「うるさい……。だって、数学は3年になってからいきなり難しくなったじゃない」

      「そうか?俺はそんなに感じなかったが」

      「未来は元々理数系が得意でしょ。というか、アンタは学年一桁台の成績なんだから何でも得意だからそう言えるのよ。その余裕さが今はムカつく」

      「ムカつくよりも先に勉強しろ」

      一応、進路が理数系大学なので、文系よりも得意なのは確かだ。

      「さて、それじゃ基本から教えていくか。今日は寝るな。寝ずに覚えろ」

      「そういうのは“お前を寝かさない”的な発言して欲しいんですけど」

      「そんなドキドキするような発言できるか」

      この子は欲求不満な人妻願望でもあるのかねぇ。

      遊んでる場合でもないのでそのまま俺達は勉強を開始する。

      留美は元々そう頭が悪いわけじゃない。

      成績は総合的に中の上といった所か。

      だから、あの2人を教えるよりもはるかに簡単だと思っていたのだが……。

      「……なんでこうなるんだろうな」

      俺は本日何度目かのため息ををはきながら、留美のした小テストを見る。

      教科書と参考書の問題を組み合わせて俺がつくった小テスト。

      見事に全滅、というか俺が教えた基礎問題すら間違えている。

      「ここまで覚えが悪かったか、留美」

      「ちょっとした計算間違いじゃない」

      「それが十問連続だったらバカとしか言えん。だからさ、この式にこの数字を代入させて計算するだけなんだっての。確かに似たような式だから、間違えるのはわかるが」

      俺は一問一問、どこが間違っているのかを教えていく。

      確かに計算間違いであり、式を間違ってるだけなのだ。

      ただし、どの問題にどの式を使うかを理解してないために悪循環を繰り返している。

      「そろそろ休憩しない?もうじき2時間くらいたつし、集中力も切れてきたでしょ」留美がそう言って時計を指差す。

      時間はまもなく9時といったところか。

      「そうするか。このまま続けるよりも休憩挟んだ方がいいだろうしな」

      休憩に入って舞と留美がお菓子の準備をしている間、俺は隆樹達の様子を見ると、彼らは既に死んでいた。

      ぐったりと机にうつぶせになる姿に哀れみを感じた。

      「どうしたんだ、これ?」

      「見た通りだな。普段使わない頭の使いすぎでオーバーヒートしている」

      雄輔は呆れた声で言いながら、ジュースに口をつけた。

      梓は自分の勉強をはじめている辺り、余裕みたいなものを感じられる。

      「スパルタ教育でもしたか?」

      「僕はもっと優しくしたけどね。どちらかといえば湯瀬さんが……ねぇ?」

      「あら、私はそんなにスパルタじゃないわよ。2人がついてこれなかっただけだもの」

      「……なるほどな。ほどほどにしてあげろよ、梓」

      梓の指導がスパルタ方式とは……人は見かけによらないな。

      メガネでもかけて美人教師にでもなればぴったりかもしれんが。

      「お待たせ、夜だからあんまりカロリー高くない方がいいよね」

      舞が運んできたのはショートケーキだった。

      カロリー高くないといいつつ甘いケーキとは……。

      「美味しそうなケーキ。これって駅前のパピオのケーキだよね?」

      「うん。帰りに買ってきたの。あそこのケーキって美味しいよね、梓ちゃん」

      「ええ。甘さが絶妙なバランスなのよ。ほら、未来君も雄輔君も食べないの?」

      俺と雄輔はこんな時間に甘い物かよ、と心の中で呟きながらありがたくケーキを頂いた。

      美味しそうに食べる舞と留美、梓の3人を見ていると女の子ってすげぇなって思う。

      「……ぐはぁ」

      まだ死んでいる2人は見ないようにしておこう。

      勉強を再会して数時間、時計の針は既に12時を過ぎていた。

      「さて、そろそろ寝るか」

      「もうそんな時間なの?……って、寝るかってどういう意味よ」

      問題集とにらめっこしてる留美が怒った口調で言葉を放った。

      「ん?そのままの意味だ。あ、留美はまだ寝ちゃダメだぞ。まだまだその問題が終わってないからな。でも、俺は寝る」

      「コイツ……」

      「とまぁ、そんな冗談はおいておくにしてもそろそろ眠たくなる頃合だ」

      ぶっちゃけて言うと寝たい。

      明日の事も考えると今寝るのはマズイが睡魔には勝てぬ。

      「まぁ、寝るのも大事だぜ。よく言うじゃん。徹夜するより寝た方が頭に入るって」

      「そうね。このまましてても余計頭に入らないし……。どうせなら朝から勉強する?」

      同じように2人の問題児に苦戦する梓が俺の言葉に続いてそう言った。

      「その方がいいんじゃないか?今寝て、5時頃から起きて勉強する方がいいと俺は思う。みんなの意見はどうなんだ?」

      「異議なし~」

      「悠里、そういうのはこの問題といてから言おうね」

      「うぅ、梓の鬼教師……」

      相当梓のスパルタ教育が堪えてるのか、唸りながら問題に戻る悠里。

      頑張れ、頑張るんだと他人事で応援しつつ、俺も留美の問題に目を通す。

      「ようやく正解がでてきはじめたな。この調子で続けてくれ」

      「うん。で、寝る話はどうなったの?」

      「俺達は寝るさ。ただし、3人には続けてもらう」

      「えぇー」

      彼らにはあと1時間ほど頑張ってもらい、俺達は先に寝させてもらう。

      1階の大広間に俺と雄輔、隆樹が寝ることになっており、女子連中は2階の個別の部屋で寝ることになっていた。

      さすがにこのメンバーでも男女混合するほど安全ではない。

      「……それじゃ、俺と雄輔は先に寝るから。舞、梓はあとを頼むな」

      「うん、お疲れ様。おやすみなさい」

      「おやすみ」

      俺達はそれぞれ用意された布団に入って、睡眠をとろうとする。

      「明日は5時おきかよ。僕はあんまり早起きは得意じゃないんだ」

      「俺が起こしてやるさ。どうせ、留美もいつもみたいに起こさなきゃならんし」

      「そうやって無防備な女の子を起こすのが常な未来は勝ち組だと思うぞ」

      雄輔のそんな茶化した言葉に俺は何も言い返せずにいた。

      翌日、ちゃんと時間通りに目が覚めた俺は1度自宅に帰り、着替えをすませてから再び留美の家を訪れた。

      階段をあがり、いつものように留美の部屋の扉をあけると布団に包まってる留美がいる。

      「やっぱりこの時間じゃ起きられないか」

      予想通りだったし、それに昨日の事を思えばもう少し寝かしてあげたかったが、それでは意味がないのでいつもよりも優しく起こしてやる。

      「ほら、起きろよ」

      肩を軽くさすってやると、うぅんと小さな声をあげる。

      寝ていた横顔、そして、留美ではない長い髪が布団の中から姿を現わす。

      「……!?」

      俺はのぞかせた顔が明らかに留美ではないことに硬直した。

      薄っすらと瞳をあけてこちらを見上げてくるその顔は留美ではなく舞だった。

      「「……え?」」

      声がはもってからしばらく2人とも事態の状況を飲み込むの時間を要した。

      ようやく事態を理解した舞が顔を赤らめて、頭を布団の中に戻してしまう。

      俺ははじめてみる寝起きの舞の顔にドキドキさせられてどうすればいいかわからなくなってしまう。

      こんな展開は予想外で、心の準備ってもんがだな……。

      興奮する心臓を抑えて、深く深呼吸する。

      「あ、あれ?なんで、舞がここで寝てるんだ?ここ留美がいたんじゃないのか?」

      「るーちゃんならもう起きてるはずだよ。私はまだ寝ていていいって言われたから。そ、その……ミクちゃんが起こしにくるなんて知らなかったから」

      「俺も……いつものくせで……いきなり悪かったな」

      「ううん。それは全然いいよ。……でも、あぅぅ」

      寝顔を見られた恥ずかしさからか、彼女は中々布団から出てこようとしない。

      俺もこれ以上いたら舞を襲っちゃいそうなので、我慢しながら外へ出る事にした。

      「お、俺は先に下に行ってるから」

      部屋を出てからもう1度大きく息を吸い込んで深呼吸した。

      落ち着け、俺……。

      呼吸を整えた俺は既に起きているという留美を探しに一階へと下りる。

      「……で、そのテレビにでてたワラビーがものすごく可愛かったわ」

      「ワラビーって確か小型のカンガルーだよな。あんなのペットにしてる人がいるんだ」

      「いるっていうか、ペットとして人気なんだよ。ふわふわって感じがもう可愛くて……」

      階段を下りて広間に出ると梓と雄輔が楽しく話をしている。

      この2人、実は互いに好意を抱き合ってるのだ。

      ただし、それに互いに気づいてないから進展もなしで恋人未満を続けている。

      「おはよう。留美がいないんだけど、どこにいるか知らない?」

      「ああ。確か散歩に行って頭をすっきりさせてくるとか言っていた。お、そろそろ時間だな。クマ五郎を起こさねば……。湯瀬さんは悠里を起こしてきてやってくれる?」

      「うん。未来君、気になるなら外に探してくれば?」

      「わかった。ちょっと行ってくるよ」

      後の事は彼らに任せて、俺は留美がいるであろう場所に向けて歩き出す。

      彼女がどこにいるかはわかっていた。

      家から3分ほど歩いた所にある桜並木の歩道。

      春になると満開の花が咲いて綺麗なその道のベンチに彼女は座っていた。

      「おはよう……って、寝てるじゃないか」

      ベンチに座ったままで目を瞑ってる彼女。

      このまま放っておいたらやばいことになってたであろう。

      俺が彼女の頬を指でぷにっとつつくと、小さな吐息をたてる口元が反応する。

      「んぅ……」

      疲れ気味な彼女が幸せを邪魔されたような顔をする。

      「……悪戯しないでよ、未来」

      「だったら、さっさと起きろ。こんなところで寝るな」

      「ちょっとこうしてたら気持ちよくって……」

      その気持ちは分からないことはない。

      夏の朝の空気は年間を通してもっとも心地よい涼しさと開放感がある。

      「さぁ、気分リフレッシュしただろ。さっさと帰って勉強するぞ」

      「わかったわよ。でも、もう少しだけ一緒にのほほんとしてたいなぁ」

      そして、俺達は気分を新しくてテスト勉強に戻る事にした。

      【 To be continue… 】

      ☆次回予告☆
      テスト終了、その結果は?
      そして、はじまる夏休み。
      高校最後の思い出作り。
      少女達の複雑な感情が入り混じる大嶺祭が開催される。
      打ち上げられる花火の中で未来のとった行動とは?
      【第7話:俺達の秘密】
      夏祭りは俺に選択を迫る。
      どちらの約束を守るべきか?

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