晋江文学城
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28、第26話:少女の傷痕 ...

  •   神様は私に試練を与えているのかもしれない。

      それは私が倒れる数日前の事、私にとって“喜び”と“悲しみ”と“苦しみ”が交じり合う出来事だった。

      今日は最後の治療の日、病院でいつものように神崎先生の治療を受けていた。

      私の胸の怪我はもう抜糸もすんで薄っすらと痕が残るだけ。

      「今日でこの傷の治療はお終いね」

      「ほとんど傷痕も見えなくなりました。先生、ありがとうございます」

      傷痕が残るかもしれない、そう言われていただけに私は一安心できた。

      神崎先生には色々私にとって相談相手にもなってくれた。

      そう、私の身体は今、もう1つの問題を抱えている。

      「これがお仕事だもの。それよりもあの話は長谷部君にしたの?」

      「まだ……。とりあえず、まだ可能性ってだけですよね?」

      「昨日の結果が出てるはずよ。今から先生の所へ行きましょ」

      昨日、私は神崎先生の知り合いの先生に身体を調べてもらった。

      その結果が今日でるのだけど、私はその結果が怖い。

      「……貴方が怖がっているのは結果ではなく、その先の長谷部君の反応の方よね」

      私は頷きながら担当してくれた先生の元へと向かうことにした。

      『貴方は……妊娠しているかもしれないわ』

      体調不良を相談すると、彼女から返ってきた言葉はそんな衝撃的な言葉だった。

      ここ最近、睡眠不足に貧血気味と続いていたので何となく気になっていた。

      先生の言葉に心当たり、もしかしたら、妊娠しているかもという予想はあったんだ。

      だから、驚きはしたけれど「やっぱり」という納得もしていた。

      未来との子供……私がお母さんになること、それ自体は本当に嬉しい。

      だって、ずっと望んでいた未来との“絆”がやっと手に入るのだから。

      望み続けていた絆がこういう形で実現するとは思ってなかったけれど。

      だけど、手放しで喜べるワケじゃない問題だってある。

      それは……未来のこと、彼の将来を束縛してしまう、それが私は嫌だった。

      未来は私のことを好きではない、舞を失い、一時的な気の迷いで私を抱いたその結果。

      彼はひどくその事を気にしていたし、子供までできたといえば罪悪感から責任をとってくれる、でも、それじゃ……彼の望んだ将来は手に入らなくなってしまう。

      自業自得、自己責任、そう言われてしまえばそうかもしれないけれど、私は……未来には幸せになってほしいから。

      ……だから、その結果を聞いたとき、私は悲しい気持ちにもなってしまう。

      産婦人科の先生から告げられたのは私が妊娠しているという事実。

      若い子の妊娠はいろんな問題があるのもわかっている。

      どうしよう、それが私の本音で、そんな私に優しく声をかけてくれる神崎先生。

      「前に貴方から聞いたけれど、長谷部君とは恋人関係なの?」

      「微妙ですね。正式にそう告白したワケじゃないですから。私は子供の頃から未来が好きだったんです。彼の恋人が亡くなってしまって、その後に私が入り込んだみたいな」

      私たちは恋人じゃない、未来の口から好きという言葉は1度も言われた事がない。

      未来の心にはまだ舞がいるから、私のことを好きになってほしい、なんて言えなかった。

      「……これは貴方たち2人の問題よ。自分ひとりで抱え込まないで素直に彼に話してみなさい。大丈夫よ、長谷部君ならきっと留美さんを支えてくれるはず」

      「わかってます。未来は優しいですから……」

      ……私は“どうしたい”のではなく“どうすればいい”のか私は1人で悩み続ける。

      私の望みは彼の望み……、私の中にはこのまま未来と結ばれる期待があった。

      期待したくない、そう、私は……もう期待なんてしたくないんだ。

      期待すれば裏切られた時に辛いだけだから……。

      そして今、私はまた病室のベッドの中にいた。

      重度のストレスによる体調不良、3日程度の入院だと言われた。

      未来も心配してくれて私の世話をしてくれている。

      いつもよりも優しい彼の態度が嬉しいけれど、私は話さなくちゃいけなかった。

      ちゃんと向き合って、未来に私と子供のことを話をしたい。

      彼と2人きりになれた時に私はその話を切り出した。

      未来は神崎先生から聞いていたのか既に私が妊娠していた事を知っていた。

      「お前と一緒にいたいんだ。幼馴染としてじゃなくて、恋人やそれ以上の意味を含めて」

      彼の態度と言葉は素直に嬉しい、私が望んでいた事だもの。

      「……ありがと。でも、貴方はそれでいいの?あれだけ頑張って勉強していた大学受験はどうするの?この子がいるから、未来の将来へ影響を与えるなんて思いたくない。考えたくない。……私はね、未来。貴方の“枷(かせ)”にだけはなりたくない」

      けれど、それは“私の望み”で“未来の望み”ではない。

      「何を言ってるんだよ。これからどうするつもりだ。お前一人にはさせない。こんなことになったのは俺のせいだ。俺は留美に甘え続けていた。俺は何もしてやれずに傷つけてばかりいたというのに。だから……」

      「うん。未来の私を思ってくれる気持ちは嬉しい。これで『じゃ、さよなら』なんて言われたら、ショックだし。でも、どうするつもり?すぐには何もかも無理だよ。あと数日で高校卒業して、大人になるとしても私たちは現実にまだ子供だもの」

      私がまだ彼からある一言を聞けていない好きという言葉。

      一緒に生きたい、それは告白だけど、それよりもストレートに私はそれが聞きたい。

      だって、そうじゃないと……私はもう1つの意味だって思い知らされるから。

      「俺としては今、留美と共に生きることを選びたい。俺は俺のするべきけじめをとりたいんだ。俺が無理やりしたことで、留美が傷ついて、そして今こうなってしまった以上、俺は責任をとるよ」

      「……やっぱり、そういう意味だよね」

      彼がそう言ってくれたのはやっぱり“責任”からなんだよね。

      私のことが好きで言ってくれたわけじゃない。

      「未来は……子供ができていなくても同じことを言ってくれたの?わかってたのに。また……期待しちゃった」

      ……未来が私のことを好きだって言ってくれたらどれだけ私は救われるだろう。

      未来と話し合いが一旦終わって、彼が食事に出ている間に私はまた1人になった。

      そうだ、私はまだちゃんとした形で彼に「好き」だと伝えていない。

      一緒にいたいとか、そんな言葉で言っていないのは私の方。

      私たちは互いに好意を確かめた事がなかった。

      どうしても舞に対して負い目があるから、舞には想いで勝てないから。

      それなのに、その時の私はそんな自分の罪を忘れてしまっていた。

      自分が好きだと伝えてないのに、彼から言われたいと思う私。

      好きとかじゃなくても、この子のためには未来が必要なのは変わりない。

      「……ねぇ、もういいよね。私も自分の幸せを求めてもいい?」

      私は未来が好きだと今度こそ、ちゃんと彼に自分の気持ちを伝えよう。

      きっとそこからはじまれるそんな気がする。

      どんなに考えても私は未来から離れられないんだもの。

      「舞。未来が私のことを受け入れてくれるならそうしてもいい?」

      子供のために、それは言い訳に似ているけれど、もう私としてもこれ以上はダメだった。

      「私は……未来と一緒に生きたいよ」

      未来が欲しい、未来にそばにいて欲しい……そんな気持ちをとめられない。

      少しだけ前向きにそう考えていると何だか頭が痛い……おかしな頭痛が私を襲う。

      未来が好き……そう思うと私の中で何かが警告し続ける。

      それは罪を忘れようとした私に下した神様の罰だったのかもしれない。

      『どうして……?駄目……なの……』

      視界が赤く染まる……嫌な声が聞こえてくる。

      私は“何か”を思い出すようなそんな感覚に襲われる。

      『……許さないから。私は舞のこと、絶対に許さないもの』

      ……自分の言葉をきっかけに私の頭の中にいつかの出来事が思い出される。

      今の今まで記憶の中から失われていた“舞が死んだ日”の出来事。

      あの事故の前後の記憶が……鮮明に蘇える。

      事故の様子、そしてあの日の出来事、私が何を言ったのか、何をしたのか。

      「……ひどいのは私……私が……舞を殺した」

      赤い……血が赤い……視界が真っ赤な血の色しか見えなくなる。

      「いやぁあああああああああああ!!!!」

      涙がとめどなく溢れ出して、私は叫び声をあげた。

      あの日、私は舞に呼ばれて学校近くの公園にいた。

      12月の冷たい寒さに私はコートを着てくればよかったという事と、わざわざ屋外で話をしようという安易な了承に後悔していた。

      「……どうして外で話したがるかな」

      せめて暖かい室内で話ぐらいしよう、確かに誰にも聞かれたくない話だけど……。

      「それで用件は何なの?」と聞くと、舞はゆっくりとこれまで経緯を話し出した。

      どうして自分が好きになって、私を騙していたのかを。

      「……だから、るーちゃんの約束を破らせるようにしたのも私なんだ。私、けっこう独占欲が強いみたいなの。裏切ってるのはこっちなのに嫉妬してた」

      話がしたい、そう言われて私が彼女に裏切りの理由でも聞いて欲しいとでも思ってる?

      だとしたら、舞の間違いだ、私は全てを知っている。

      未来が舞を好きだったのも、舞が未来を好きになっていた事も。

      いまさら謝られたいわけじゃない、そんなのは放課後の告白で十分。

      もう私としては放っておいて欲しいくらいだ。

      私の希望はもうない、どうぞ幸せに、それくらいしか私が舞に言えることはない。

      「うん。るーちゃん、本当にごめんなさい」

      「だから、謝って欲しいわけじゃない。違うよ、舞……。もうね、謝っても遅いんだよ。私は……心の底から貴方が大嫌いだから」

      私は静かにその言葉を彼女に向けて放つ。

      「舞、本当に謝りたいと思うなら、私に未来を返してよ。できない。できるわけがない。だって、未来は舞が好きだもん。貴方だけの意思じゃない、両想いってそういうことでしょ。片方だけじゃないって事だもの。それに比べて私の気持ちは片思い。はじめからこうなることなんて目に見えていた」

      私が舞に勝てないのもずっと分かっていて、私はただ微かな希望を求めていただけ。

      「ねぇ、舞。どうして貴方なの。どうして私じゃないの?どうして私じゃダメなのかな。未来が好きになったのは私の方が先なのに。積極的に動いていたのも私なのに。どうして未来は私じゃなくて貴方を選んだのよ……」

      私は報われなかった恋を八つ当たりしているのに、私の言葉にただ耐え続ける舞。

      それが彼女なりの責任のとり方のつもり、私はそんな程度で許してはあげない。

      「……許さないから。私は舞のこと、絶対に許さないもの」

      「ごめんなさい」

      「舞はそればっかり。ホントに未来のことが好きなら、私に嫉妬するくらいに好きなら何か言い返せばいいじゃない。私が邪魔だったんでしょ。でも、舞は今まで何も言わなかった。私は何より許せないのは舞が私に対して、未来が好きって本気で言わない所」

      彼女は私を騙していた、それはわかっていた。

      でも、私としては例え失恋する結果だとしても、彼女の口からこうなる前に想いを聞きたかったし、そうすれば……私たちはまだ少しでも友達でいられたのに。

      「……私の気持ちを知っていて、騙すような事しかしてない。ちゃんと話してくれないとわからないじゃない。私は何度か言ったよね。未来のこと好き?って。嘘つかずに言ってよ。そうしたら、対等な立場でいられたのに……」

      自分の言葉、気持ちは全て過去のもの、もう時間は戻ってこない。

      「ごめんなさい……」と彼女は最後までそれしか言わなかった。

      「……もう帰る」

      公園を出ても、彼女は私の後ろをついてくる。

      当たり前だけど、同じ帰り道だからしょうがない。

      ちょっと嫌な気持ちにはなるけれど、そこまでは否定する気になれない。

      許せないという気持ちは怒りからくるものじゃない。

      なんて言葉にしていいのか私にもわからないけど、ただ許せないだけ。

      道路に出て私は突然のライトに目を瞬かせると、車が猛スピードでこちらに突っ込んでこようとしていた。

      「え!?」

      視界が真っ白になる……私は……この世から消える瞬間を迎えるはずだった。

      「るーちゃんッ!!!」

      そして、舞の声がはっきりと私の耳に聞こえて、私は意識を失った。

      私は病室で泣き叫んでいた。

      「私が……私が殺したんだ……!!」

      「落ち着いてください、神保さん。どうしたんですか?」

      先生や看護士の人が来て、私を落ち着かせようとしている。

      でも、落ち着けるわけなんてない、私はパニック状態に陥っていたから。

      「いやぁ!どうして!?」

      過去を全て思い出した、あの時、車に轢かれるはずだったのは私の方。

      きっとあの子がとっさに私をかばったんだ。

      だから、私だけが生き残った、……舞を殺したのは他でもない私自身だった。

      「どうしたの!?これは……」

      神崎先生が病室に入ってきて、私の身体を抱きしめるようにして押さえる。

      「留美さん、落ち着きなさい。どうしたの?」

      「……せん……せい?」

      涙で視界がかすみながら、先生の姿を確認すると、

      「……うぁあ……先生。私……私は未来に好かれる資格なんてなかった。舞を殺したのは私自身なの。私を守ろうとして……舞が……舞……」

      「記憶が戻ったのね。大丈夫、落ち着いて。今は混乱しているだけだから」

      先生が必死に私を抱きしめてくれるけど、私は自分の中から溢れ出す自らへの憎悪の気持ちに押しつぶされそうになる。

      「どうして私を助けたの、舞……」

      皆が本当に生き残って欲しかったのは私じゃなくて貴方なのに。

      そうだ、未来だってそうだったじゃない。

      『どうして舞が死ななくちゃいけなかった!』

      初めて私を抱いたとき、彼は私を愛してくれたワケじゃない。

      舞を亡くした怒りを私に向けていた。

      『……なんでだよ。どうして……こんな事にならなくちゃいけなかったんだ!!!』

      私が舞を殺したから……私が未来と舞の幸せを奪ったから。

      私が幸せになりたいなんて言えるわけがない、未来と幸せになんてなれない。

      「私、どうしよう。もう、未来に会えない。嫌われちゃう……嫌ぁ……」

      私だけが嫌われるだけならまだいいいよ。

      でも、お腹の子供まで嫌われちゃったらどうしよう。

      未来に愛して欲しいなんて望めない、自分の気持ちだって伝えられるわけがない。

      この関係を全て壊したのは私自身だから。

      「神崎先生。私、どうすればいいの?どうすれば未来に許してもらえるかな……」

      許してくれるわけない、未来はこの事を知れば、私との関係は完全に終わってしまう。

      「許すとか、そういうのじゃないわ。長谷部君なら、留美さんの事をそんな風には思わないから……。だから……安心しなさい。悪いのは貴方じゃないわ」

      「安心?無理だよ……ぁっ……だって……」

      私の頭には未来が怒りを露わにしていた姿を思い出す。

      『……全てはお前のせいだ。なぁ、留美?』

      舞が死んだ事に怒り、私が恐怖を感じたあの時の未来を思い出すだけで嫌になる。

      「もう……やだ……痛いのは嫌、苦しいのも……嫌……」

      私はただ未来と一緒の時間を過ごしたいだけなのに、世界はいつも暗色をしている。

      先生の手を払いのけて立ち上がり、そのまま病室から飛び出した。

      どこに向かおうとしているかすらわからない、ただこの場所から逃げ出したかった。

      ごめんね、未来、私はもう……貴方に会えないよ。

      【 To be continue…】

      ☆次回予告☆
      病院を抜け出した留美。
      彼女が向かった先はかつての約束を交わした場所。
      僅かな望みだけを胸に少女は願う。
      彼の望んだ相手は自分ではなかった。
      それでも、一言だけ、あの人に伝えたい言葉があるのだと。
      【第27話:果たされぬ約束】
      神様、彼に一言だけ「好き」だと言わせてください。
      それで私はもうこの気持ちを終わらせるから。

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