晋江文学城
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10、第8話:苦しみの愛 ...

  •   花火大会の翌日、俺は舞の部屋にいた。

      同じベッドで同じ朝を迎える。

      想像していた以上に恥ずかしい気持ちになる。

      ちらりと横をみると薄手の布団の中に舞の白い肌が見え隠れしていた。

      「うっ……」

      思わず、目を逸らしてしまう。

      昨日、あんな事があっても直視できる程俺は男ができてない。

      ……落ち着け、俺。

      とりあえず深呼吸して落ち着こう。

      窓を開けると、朝の新鮮な空気が部屋の中に入ってくる。

      「気持ちいい風だ」

      俺は舞の方を横目に見つめる。

      今日も可愛い舞だけど何だか大人びて見える。

      舞を見るたびに何だか邪な考えが頭をよぎってしまう俺に自己嫌悪する。

      浮かれているのは分かるけど、こんなんじゃ舞が起きたときに嫌われてしまう。

      そうこうしてるうちに舞が目を覚ました。

      見開いた目で俺を捉えると「あれ?」という表情をして、現実を理解したのか俺と同じような恥ずかしさの入り混じった表情をする。

      そんな仕草が俺は可愛いと心底思うのだ。

      「……お、おはよう。ミクちゃん早いんだね」

      「まぁな。俺は元々朝は強いほうだから」

      「そうだったね。……えっと……」

      彼女はこの現実にどう対処するべきかを悩んでいる。

      俺は舞の様子を見ながら言葉を選んで、

      「とりあえずはおはようのチューかな」

      「えっ!?」

      ……バカですか、俺。

      だから、浮かれるなと言ってたのに。

      でも、口から自然に出ちゃったんだからしょうがないじゃん。

      そんな誰にするわけでもない言い訳を心の中でしている。

      「なんてな。軽いじょうだ……ん」

      言葉を言い終わる前に塞がる口。

      舞の性格から俺の冗談を察することはできない。

      本当に俺と接吻してくる舞。

      ホントに軽い冗談だったんだけどな。

      「……ちゅ……ぁあ……」

      最近、舞のキスが何だかエロさを感じるんだよね。

      徐々に彼女も感じているような素振りを見せ始めている。

      こうして積極的に唇を求めてくる彼女に嬉しくなる。

      「……うぅ、朝から何だか恥ずかしいよぉ」

      その照れ方もぐっとくるものがある。

      ホント舞は可愛いすぎ。

      「……朝食はどうする?」

      「今日は私が作るよ。ミクちゃんはいつもマスターさんの所で食べてるんでしょ」

      「ああ。でも、舞の作ってくれる朝御飯の方が楽しみだな」

      ……好きな人とこうやって楽しい時間を過ごす。

      それを幸せと呼ばず、なんと呼ぶ。

      「ふふっ、ミクちゃんに料理をつくってあげられるの久しぶり」

      「去年のクリスマス以来だもんな」

      そんな朝の光景に俺は充実していた。

      と、まぁ、浮かれるのはここまでだ。

      俺達は浮かれてばかりいる状況ではない。

      甘いこの時間が現実の全てではないのだから。

      朝食を食べ終わった俺達は一旦解散して、昼頃に再び図書館で会う約束をしていた。

      家に帰った俺は服を着替えたり、シャワーをあびてすっきりとした。

      「……あ」

      俺はシャワー浴びて頭を拭いている時に何となく手にした携帯にメールが来ていたのに気づいた。
      メールの差出人は留美。

      届いたのは昨日の夜だったらしく、俺は何だか気まずいような感じを受けながら、そのメールの内容を見る。

      『明日の昼に遊びに行きませんか?勉強で忙しいと思うけど、たまには息抜きも必要です。暇だったらメールください』

      どこか留美らしくない他人行儀なメールに俺は違和感を覚えた。

      いつもの彼女なら『遊びに行こう』とかそんな簡単な内容なのに。

      こちらの顔色をうかがうような内容はどこか彼女らしさがない。

      俺は携帯をいじりながら、彼女に返信する。

      『今日も舞と一緒に勉強する約束してる。でも、お前の言う通りたまには息抜きも必要だ。3人でどこか行くか?』

      しばらくすると彼女から返信がきた。

      『うん。隣街の市街地の方へ行こうよ。駅前の通りに新しいカフェができたんだって。そこのケーキがものすごく美味しいって悠里から聞いたの』

      今度は彼女らしい文と絵文字で返ってくる。

      俺はそのことに安心して、今度は舞に連絡しておいた。

      その違和感こそが俺達の関係に“ひび”をいれるモノだと気づかずに。

      昼飯を食べてから、俺は自転車に乗りながら駅へと向かう。

      何もない田舎の村だが、駅前だけは栄えている。

      というか、ここがこの村の中心と言ってもいいだろう。

      商店街を抜けて駅につくと、既にそこには舞と留美がいた。

      遠目に見ると、何か話をしているようだが様子が変だった。

      笑うようなそんな感じではなく、シリアスな雰囲気と言えばいいのか、どちらの表情も暗いように見える。

      「よう、待たせたようだな」

      「ううん。ちょうど約束の時間だから」

      さっきまで感じていた雰囲気は両者にはない、俺のただの思い過ごしだったらしい。

      「それじゃ、いくか」

      「うん……」

      俺達は電車に揺られて、目的地へと向かった。

      悠里がお勧めだと言っていたカフェはオープンテラス付きの今時のカフェだった。

      ううむ、おやっさんの喫茶店とは大違いだな。

      客層は女性客を中心に賑わいをみせる。

      俺達は席に座って、おのおの食べたい物を注文する。

      「俺はアイスコーヒーとワッフル。舞は何にする?」

      「私はオレンジペコと抹茶ケーキでお願いします」

      店員さん注文を書いている間をかけて、留美がメニューを見て悩む。

      どうやらケーキをどちらにするか迷っているようだ。

      「レモンティーと苺のムースで」

      「わかりました。少々お待ちください」

      店員が去ってから彼女はメニューを指差して、

      「このエンジェルパフェって何だろうね」

      「エンジェル?」

      “この店1番お勧め”と書かかれた下にのってる写真はチョコレートで天使の羽を模したパフェだった。

      ありきたりな名前といい、その形といいインパクトはあるな。

      「食べてみる?」

      「チャレンジ精神旺盛だな。試しに食べてみるのもいいかもしれんが、俺はこれ以上甘いものはいらないぞ」

      「私も少しぐらいなら。るーちゃんは甘いもの大好きよね」

      「……結局、私だけが食べるの?まぁ、それでもいいけど」

      そういいながら彼女はそのパフェも追加で注文する。

      甘いもの好きとかそういう問題以前に、女の子として食べすぎなのは気にしないのか。

      いや、留美は太ったりしないという確信があるのもかもしれない。

      実際に彼女は太らない体質とか自称してるしな。

      俺は彼女のチャレンジ精神に敬意を示しつつ、その問題のパフェが来るのを待っていた。

      「こちらがエンジェルパフェになります」

      一番最後に出てきたパフェは名前どおりに天使っぽい綺麗なパフェだった。

      なるほど、これなら一番のお勧めというのも頷ける。

      お勧めであり、人気に直結してるかはわからないけれど。

      「美味しそう」

      「……天使ねぇ。この羽はチョコレートだな」

      「これだけ未来にあげる」

      そう言って彼女は俺のワッフルにその羽を突き刺す。

      「お子様ランチの旗かよ。ワッフルに刺すな。しかも、天使が片羽になったぞ」

      「大丈夫。こっちは舞にあげるから」

      今度は舞の抹茶ケーキに白いチョコレートの羽が飾られる。

      「ありがと。何だか可愛くなったね」

      舞は嬉しそうだが、俺はその元エンジェルパフェに目を向けた。

      「って、それじゃお前はただのパフェを食うことになるんだが」

      「エンジェルパフェは外見だけじゃないみたい。ほら、何層にもフルーツが重なってるでしょ。これだけでも十分美味しそうだもの」

      彼女はそう言ってパフェを口に入れた。

      しかし、こいつもよく食べられるなぁ。

      女の子らしさ(?)というものを感じながら、俺も自分のワッフルを食べる。

      店内の雰囲気も悪くないし、味も中々美味しいので定期的にくるのは悪くない。

      「……そういえば未来。昨日、神社のほうに来てなかった?」

      「え!?」

      「悠里が見かけたって言ってたから」

      ……まずい、非常にまずい。

      俺はちらりと一瞬、舞のほうを見てから、

      「いや、昨日はこっちに用事で来てたから、神社も花火大会もいけなかったんだ」

      「そっか。じゃ、悠里の見間違えだったんだ」

      「ああ」

      俺は嫌な汗が流れるのを感じていた。

      留美は今度は舞に尋ねる。

      「舞も昨日は来れなかったでしょ」

      「うん。ホントは行きたかったんだけどね」

      「……やっぱり、“2人”とも来れなかったんだ。来年は皆で“一緒”がいいなぁ。あ、でも2人とも卒業したら離れ離れになっちゃうからどうなるかはわからないか」

      「……そうだな」

      一緒、そう普通に彼女は言った。

      もしかしたら留美は気づいているのかもしれない……。

      俺と舞、2人とも来れなかった理由。

      それを知りながらあえて口にしない。

      舞もそれを感じているのかこの話題から話をそらす。

      「この後はどこに行こうか?」

      「俺は今日はお二人さんの付き添いみたいなものだからな。2人の行きたいところへ行こうぜ」

      結局、俺はそのまま女の子のウインドウショッピングに付き合うことになった。

      一見、楽しそうに見えた俺たち。

      だが、それは確実に変化しているのを俺は感じていた。

      帰り道、留美と家の前で別れてから、俺は舞を送るためにともに歩いていた。

      「……るーちゃん、気づいてるのかな」

      ふいに舞がそんな事を言って足を止める。

      気づいている、その言葉が何をさしているのか。

      俺と舞の2人の関係について、だろう。

      「そうかもしれないな。可能性としてなくはない。けどさ、それならそれで何かしらの行動を取ってくると思う。アイツの事だか黙って見守るようなタイプでもないし」

      「……ダメだよね。こういうのって、何だか隠れてこそこそしてるみたいで」

      「本当に付き合うか?」

      俺の提案に彼女は少しだけ心揺れ動いたようだが、

      「ううん。それをしちゃうと多分もう元にもどれない。私……ミクちゃんに甘えちゃうから。絶対にるーちゃんを傷つけてしまう。それに……」

      それに……、とその後に続く言葉は彼女は言わなかった。

      「でも……恋人じゃなくても気持ちが通じ合ってればこれくらいはしてもいいよな」

      俺は彼女の返事を待たずにその愛らしい唇を奪う。

      「……ミクちゃん、強引だよ」

      そう言いつつも互いにその感触を楽しんでいる。

      恋人の定理や境界線、その言葉の重みがどれほどのものか改めて思う。

      堂々と恋人になりたい。

      それができないもどかしさ。

      けれど、この関係が明るみになる時、俺は大事なものを1つなくしてしまう。

      そんな予感ではなく現実になるのだと俺は認識していた。

      【 To be continue… 】

      ☆次回予告☆
      恒例の花火大会。
      皆で純粋に夜の夏を楽しむ。
      だが、留美と未来の仲に異変が起こる。
      愛されたい、そう願う留美。
      舞を愛する未来との心がすれ違う。
      【第9話:線香花火】
      夜空に散る大きな花火もいいけれど、
      手元で瞬く小さな花火の方が俺は好きだ。

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